2014年6月10日火曜日

生産年齢人口 (つづき)

 日本の少子高齢化問題は、私たちが考えている以上に国をむしばみ、活力を奪っているようです。なかでも「日本創生会議」が試算し公表した「消滅可能性都市」は、きわめてショッキングな数字と云えます。いま全国には1,800の自治体があるそうですが、その半分の896自治体で「若年女性」(20~39歳の子供の出産可能な女性)の人口が、2040年までに2010年に比べ50%以上減ってしまうと云う試算です。若年女性が減ると云うことは子供が生まれないわけですから、人口の減少に輪をかけることになり、医療・介護など社会保障の維持はもちろん雇用の確保も難しくなり、都市が消滅しかねないというのです。半減する自治体には県庁所在地の青森市や秋田市、また観光地の函館市までが含まれるというからオドロキです。私が住む宮津市も人口減少が止まらず、いまは2万人を切っている状態にあり他人ごとではありません。
 一人の女性が生涯に産むと見込まれる子供の数を、「合計特殊出生率」と云うそうです。これが「2.07」なら人口が維持できるのに対し、2013年はそれが1.43で2005年に過去最低値(1.26)に達した以降は微増が続いているものの、人口を維持できる水準にはほど遠く、政府もやっと「骨太の方針」に50年たっても人口1億人を維持するという目標を盛り込み、2020年をめどに少子高齢化の流れを変えることを明確にするようです。そして来年度の予算案づくりから、高齢者向けが多い社会保障予算の見直しにも取り組むようなので、高齢者にとっては段々と厳しい状況に追い込まれることになりそうです。
先日テレビで年金問題をやっていて、学生と高齢者に意見を聞いていました。学生たちが遠慮がちに「高齢者の方が恵まれている」と述べているのに対し、マージャンに興じている高齢者たちが、「決して自分たちは恵まれていない。いまの給付額に見合う以上の年金は収めてきた。いまの若者は情けない」と述べているのが気にかかりました。いくら納付されたかは知りませんが、通常であれば給付額は納付額をはるかに上回るはずであり、それに7~8人で1人の高齢者を支えていた時代と、2~3人で支えねばならない今とでは条件が全く違うからです。厚生労働省が5年に1度行う公的年金の財政検証によると、女性や高齢者が働きに出て高成長が続いたとしても、給付水準を少しづつ下げ30年後には今より2割ほど低くしないと、政府が約束する現役世代の収入の50%以上が守れないと云います。ただ、この「高成長ケース」も前提が大甘であるとの指摘があり、今回用意された「低成長ケース」の場合にはいずれも給付水準50%を切り、最悪の場合は35~37%ほどになると云うから深刻です。私たち高齢者もそろそろ真剣に甘えを捨て、自助・共助で今の社会を支えていく気構えを持たないと、子供・孫にツケを残すどころか、自分たちの生活自体が立ちいかないことになりかねません。
 日本の高齢者の年齢階級別人口1人当たりの医療費は、下図のようになるそうです*。これによると高齢者の医療費は年齢とともに上昇しますが、しかし死亡前にかかる医療費(終末医療費)は極めて高く、それも若年齢階級ほど高く、高年齢階級になるにつれそれが低くなることから、長生きするほど苦しまずに終末期を迎えられることが分かるのだそうです。つまり長生きする人ほど「ピンピンころり」になる確立が高いのだそうです。
 宮津市では昨年、地元企業、諸団体、住民参加による「みやづ環の地域づくり推進ネットワーク」が起ち上げられ、私たち「ブルーシー阿蘇」は「Eライフスタイル推進部会」に所属し、高齢者の力を活用した「エコの環」の推進を提案してきました。議論を重ねるにつれ高齢者問題がとても重要であることが認識され、いまは高齢者が率先して社会貢献すべき仕組みを作ろうと議論しています。高齢者の積極的な社会奉仕は地域の利益になるだけでなく、高齢者自身にとっても大きな生きがいとなり、「ネンネンころり」にならない歯止めになると考えられるからです。

高齢者の生存者と死亡者の年齢階級別人口1人当たりの医療費(1998)
 
 * 柴田 博;”肉を食べる人は長生きする”、PHP研究所(2013)



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