2013年12月1日日曜日

食材偽装

  阪急阪神ホテルズのレストランのメニューの食材偽装が発覚してから、次から次へと同様の偽装が謝罪会見で明らかにされています。まるで「赤信号、みんなで渡れば怖くない」といった趣きです。2002年の雪印食品による偽装牛肉事件以降も食品の偽装問題はなかなか改まらず、国は消費者庁を設立して監視体制を強化したにも拘らず、この有様です。今回の食材偽装事件で私が驚いたのは、多くの高級ホテルで牛脂を注入した加工肉が、「ビーフステーキ」として使われていたということです。新聞によると豪州産、ニュージーランド産などの赤身の肉に、剣山のような機械を刺して牛脂を注入すると、わずか1~2分で和牛風の「霜降り肉」に加工できるのだそうです。牛脂には風味をよくするアミノ酸なども添加されており、実際に焼いて食べくらべると、加工前の肉はかたくてかみ切れず、食感もパサパサでうま味がほとんどないのに対し、牛脂注入肉は一度でかみ切れるやわらかさで、なによりジューシーでうま味が口に広がるのだそうです。一流ホテルで食事をする客は雰囲気もさることながら、料理人の腕を味わいに来ているハズです。しかしおいしいと思った料理がこんな人工加工の素材によるものだったとしたら、お客はいい面の皮で、ホテルの料理人もそのプライドはどこに行ったのかと思います。
いまから5~6年前だったでしょうか、宮津で食品添加物の害について講演会がありました。私自身は出席できなかったのですが、出席した家内の話しによると、講演者は以前ある食品会社で添加物まみれの食品づくりに携わっていた方で、製造現場の裏側をよく知っているだけに自社の製品は絶対に食べなかったそうです。しかしあるときスーパーの買い物で子供に自社製品をねだられ、それを機に会社を辞め、食品添加物の害を訴える活動に身を転じられたということでした。彼は実演でオレンジジュース、グレープジュースなど、どんなジュースも添加物だけで作ってみせてくれたそうです。
  ところでわが家で「震える牛」(相場英雄:小学館文庫)という小説を見つけました。子供が帰省した時に置いていったものと思われます。狂牛病事件を扱ったミステリー小説で、読むと中に加工肉製造の裏側を暴く場面が出てきます。暴露する人物はある食品会社の元課長で、内部告発したことで会社を辞めさせられたという設定です。内部告発に至った理由が、あるスーパーで子供に自社製品の購入を迫られ、購入できなかったからという内容からすると、著者は宮津の講演者を取材してこの小説を書いたように推察されます。その小説にはゾッとするようなことがいろいろ書かれています。その内容を若干手直しして紹介します。
 「写真にあるのは老廃牛のクズ肉、内臓、つなぎのタマネギ類と代用肉、そして血液です。これらを混ぜ合わせ、各種の食品添加物をぶち込んで作ったのがこのハンバーグです。カッターの刃を替えれば、ソーセージも作れます。」
 「メニュー表示は100%ビーフとなっていますが、老廃牛の皮や内臓から抽出した『たんぱく加水分解物』でそれらしい味を演出し、そこに牛脂を添加して旨味を加えますから、一応100%らしい食べ物にはなっています。」
 「一つひとつの添加物は、動物実験を経て発がん性や毒性のチェックをクリアしています。ただ、これらを同時に混ぜ合わせた際の実証データはなく、国も監視していません。」
 「このステーキも成型肉です。様々なクズ肉を特殊な食品用接着剤で合わせたものです。そうでなければ、250グラムで550円という値段設定はできません。」
 「世界チェーンのファストフードも基本的な仕組みは一緒です。世界中から集めた老廃牛のクズ肉に、添加物と刺激の強い調味料を混ぜ込めば、肉本来の味なんて分かりっこありません。」
 そういえばある世界的ハンバーガーの会社の社長さんが、自分の家族には自社製品を食べさせなかったという話しを聞いたことがあります。ノーベル賞でも触れましたが、いまの食品の多くは完全に「工業製品」化しています。それは消費者が安さ、手軽さを追い求め過ぎた結果であり、消費者の責任でもありますが、激しい価格競争の結果、それが高級と称されるホテルや百貨店にも浸透していたというのが、今回の事件の真相でしょう。改めて食事を原点から見直すときがきているように感じます。
 

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